迎え火送り火/
佐々宝砂
怪談をひとつも話すことなくて盆を迎える死者はいづこに
迎え火も送り火もなき軒先にちいさくあかく煙草の明かり
花火消えて火薬の匂ひ漂へるここは戦場明日は戦場
左手をなくさなかった砲兵が放たなかった銀の弾丸
銀輪のかがやく昨日過ぎゆきて赤くさびたる銀輪沈む
怪談は胸に秘め置き面白き話のみして送り火を焚く
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