こしかたゆくすえ星あかりのみ/小池房枝
 
水晶の針の折れる音を聞いたことがあります
ピキンとも
ピリンともつかぬ微かな音

聞こえない音を確かめたかったのです
音がするものならばと
指先で二つにしてみたとき
まさか聞きとれるほどの音を立てて折れるとは

鍾乳洞で
水琴窟なる仕掛けに出会ったときも
私は
本当には
聞こえるはずの音を知らなかった

忙しなくなく
間遠く満ちていたのはただ
一滴ごとに石筍たちを養う水音

私を成す前には
この体も
どこかで石であったことだろう
後のことを思うまでもない
太陽系自体が物質としては第二世代なのだから

ばらばらに解かれては結ばれる旅の途中
互いに
かすかに響き合いながら
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