函館の朝/池中茉莉花
雨が降っている
ぱあっと晴れた 海が見たかったのに
なんとなく 落ちてゆきそな
そんな心に
うす暗い 朝の海は 似ているような気がして
食堂から見える海は 見ないことにした
良人は 朝から スパゲティを 食べている
しかも 隣に 塩辛を置いて
みるみる減ってゆく 良人の皿を見ていたら
なんとなく
外は晴れたのかと思った
ふっと海を見た やっぱり陽は翳っている
窓越しに見える砂浜に 青年の影がぽっと見える
「大という字を百あまり・・・」
わたしもためしに 書いてみよう
海は見ないで 砂に ゆうっくり
あっ 生ぬるい
札幌の砂と ちがうのね
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