蛙声/まんぼう
 

いったいなにを鳴いているのだろう
夜の底が蛙の声で沸き立っている

半球はいつも夜のこの星で
絶え間なく鳴き続ける声はいつか
太陽系の外側の宇宙にむけて溢れ出すのだろう
何億年のあいだ止む事無く発声され続け
何一つ成果を得ないまま今夜も
水辺で繰り返されるこの徒労が愛ゆえなどと
夜毎苦吟する歌人の憂鬱など止むことはない

アセイよ憶えているか
嘗て闇の中に木々や草の匂いがした
ひっそりと抱き合う皮膚からは沼の匂いがした
記憶は誰のものか定かではなけれども
指に付いた接着剤を剥がしながら
耳を澄ませば
外は満天の星であるか
ラヂオでも点けようか

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