写真/山中 烏流
 
ふと、手にした
古びた写真の中に
微笑んで立つ
私に良く似た人が
いた
 
誰とはなしに
手を振るその人の
穏やかに下がる目尻は
無償の何かで
私を包んでいく
 
 
また別の
これも、古びた写真なのだが
その中には
くすんだ夕焼けが
切り取られていた
 
色褪せても
なお、輝いてみせる
その力強くも
柔らかな光の帯に
私は飲み込まれてしまう
 
 
もう一枚
これは、新しかった
その写真の中では
幼かった頃の私が
寝息をたてていた
 
安らかな寝顔は
今とはかけ離れていて
何故か酷く
哀しみを感じた
 
 
写真を、そっと
裏返してみる
そこには父の文字で
日付だけが
しっかりと書かれていた
 
何故か私は
そのしっかりとした文字を
じんわりと
滲ませて、しまった。
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