循環呼吸/南 広一
 


ひさしぶりに
呼吸を怠けていたら
わたしの
ずっとむこうまで
誰も気付かない白い歩道が
続いていて
その白い歩道のうえで
ぐるぐるとわたしを起点に
折り返しては
また むこうから歩いてやってくる
数百人数千人 の
他人が目の前で循環している
とでもいうのだろうか
なにしろきりがない
ところをいま歩いていて
どう考えても
わたしと空の境目で
かたん、かたん、と音をたてる
カウンター が
上がり続けるだけだから
もう引き返したい
と何度も思うのである
ゆるまって止まろうと
わたしが
足を出すのを
少しだけ遅らせると
折り返しにくい
と他人がクレームをつけてくる
それを聞きつけて
むこうから
また
大勢の別の他人が
わたしを起点に折り返そうと
つぎつぎとやってくる


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