/rabbitfighter
それは孤独な死であった
ハエが卵を産みつけ、蛆がわき、そいつらがまた蝿になって卵を産みつけた
それでもまだ、躯には肉が残っていた
それは孤独な死であった
妻を娶らず、子を成さず、誰も殺さなかった
―暗転―
病院のベッドで死ぬ人たちは幸いだ
病室の窓を開ければ天国までの階段が延びている
町には意外なほど沢山の木が植えられていて
どの枝も紐をかけるには丁度いい
孤独に死ぬことは
孤独に死ぬことは
顔をしかめればいい、そむければいい
鼻をつまめばいい、息をとめればいい
愛する人がいるにはいたが
今でもその人の幸せを願ってはいるが
出来れば安らかに逝ってほしいとも思うが
病室のベッドで、子や孫に囲まれながら
小さい僕を抱き上げてくれたから、僕があなたの息子です
僕を産んだのがあなたではなくても、僕があなたの息子です
小さい僕を抱き上げてくれたから、僕が。
死が、その辺りに潜んでいて、
偶然にそれに触れてしまい
拾い上げて、見とれてしまう
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