記憶の断片小説・ショートシネマ 「ロイド」/虹村 凌
 
た僕の勃起した陰茎を、ロイドが擦っていた。
正直、痛かった。
ロイドは僕の陰茎を握りながら、
「ねぇ、お風呂場で最後までする?」と聞いた。
「いい、しない。」と僕は答えた。

彼女に関して、僕はこの答だけを本当に後悔している。
何よりも後悔している。悔やんでも悔やみきれない。
帰りたくても、二度と帰れない夜なのに、どうして僕は。
今、僕は彼女を抱けるなら抱きたい。一晩中でも抱きたい。
ゴディバのホワイトチョコレートリキュールにまみれて、
何時間でも、彼女とお風呂場で戯れていたい。
僕は彼女を抱きたい。
もしも時間が一度だけ戻せるのなら、あの時に。
そのくらい、僕は後悔している。

僕は勃起した陰茎を仕舞うと、みんなで眠る用意を始めた。
僕は左手でライチの手を、右手でロイドの手を握った。
両手に花を握り締めながら、僕らは、少しだけ眠った。
二度と戻れない夜、帰りたくても帰れない夜。
僕らが一番幸せに過ごせた、最初で最後の夜。
[グループ]
戻る   Point(1)