俺の隣でソイソースグラスホッパーが「もう喋るな、話が噛み合わねえ」と泣いた/人間
 
――そういえばショウユバッタの正式名称はショウリョウバッタらしい
――口から醤油出すのに


金曜の夕方
インターフォンが鳴った
ドアを開けたら足元に
ショウユバッタが一匹いた

ふれあいに餓えていた俺は躊躇無く彼を部屋に招き入れた
四畳半の中央
炉畳に居座った彼はキチキチキチと
「私の名前はソイソースグラスホッパー。お前は」
「俺は」
俺は法の目をかいくぐって手に入れたなけなしの闇米で彼に塩粥を振舞った
彼は家計簿のレシートを階段にして茶碗の縁に登り
溶けた米を一粒ずつ
時間をかけて咀嚼した
それから
俺は彼と話し合った
キチキチキチキチキチキチキチキチキ
[次のページ]
戻る   Point(4)