そして僕は絵描きを名乗る/桜井小春
 
4Bの鉛筆を持つ手が重い。

それでも

描かなければ。

イーゼルに立てかけたキャンパスに

目の前の風景を描き込んでいく。

仕上がった下描きは

ひどく

空虚なものに思えた。



筆を持つ手が重い。

それでも

描かなければ。

下描きの済んだキャンパスに

パレットの上で生んだ混色を

一つ一つ乗せていく。

しばらくして





出来上がった。

完成されたというのに

消えない空虚感。



気が付いていたら僕は

パレットナイフで

キャンパスを切り裂いていた。




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