樹海/円谷一
2004年8月の寒い朝 うっすらと霧のかかる山と目と鼻の先にある一軒家で(それらの間に樹海が広がっている)君は縁側に座って漬けていた大根を洗っているおばあさんの様子を見ている 昨日は森の近くまで行ったのだが時間が遅く引き返し暗闇の中灯りの灯ったここに泊まらせてもらった 時はこれ以上進もうとも戻ろうともしない 漠然とした時の中で心の何処かに樹海は死ぬ為にある場所なんだよということを共に感じ 山(富士山)の蒼さにノスタルジーを感じて白さに安心感を覚え 総合的に閉塞感を抱いていた
どうして森に行きたがるのかは君しか知らない なぜなら心は君の隣にあるからで 所有物ではなくなっているからである
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