哀しみ皇子(9)/アマル・シャタカ
 
ここから二人で出て行っているさ
なぜなら、愛とは環境に左右されることなく二人を結びつけるものなのだろうから
俺は自分の不完全さはよく知っているつもりだ
だから、愛を見ることよりも、あいつを失いたくないだけなんだ
だから、こんな縛りのある土地に住んでいる」
うう・・・大人の話な気がしてきたよ、ぼく
あ、太郎さん、引いてるよ!
「おっと」
太郎さんが釣り上げた
じゃあ、太郎さんも二人きりになるために、ここに住んでいるのね
「そういうことだな」
それは、花子さんを失わないために?
「そうだ」
太郎さんはまた、釣り糸を垂れた
「ただね、ここから出て行くのは自由なんだよ
俺はあ
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