きみは昼の月/Utakata
 
いかけた
頬に落ちた髪の毛の影に
初めて死のことを考えた気がした

すごく
君は似ていたと思ったんだ

君の笑いは透明で
本当は笑ってなんていないんじゃないかと いつだったか思った
水母みたいだった
宙に泳ぐ水母みたいだった

月を
一旦目をそらして再び見ると
それは空のなかで少しずつ位置がずれているような感じがした
僅かな支えで揺れてるみたいに
そのうちふっと消えるんじゃないかと
いつも思っていた

踊って欲しい
生ぬるいワインをあげるから
あの河川敷の
橋の下でステップを踏んで
裸足の下の草を踏みしだいてほしい
死にかけた太陽を背景に
手拍子なら叩いてあげる
いつだって
あげるから

君は夢を見る水母
君は完全なからだ
君は冗談の笑み
君は昼の。



――最後に昼の月を見たのは
  いつだったか思い出せない
  冗談のような
  空に浮く星

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