メルティ/山中 烏流
 
使い古したような
ソファーに沈みながら
ゆっくりと
足をばたつかせる
 
水中散歩でもしようか
その、一言が
恥ずかしくて言えないまま
そっぽを向いている
 
 
君はきっと
お気に入りの入浴剤の
香りを振り撒きながら
歩み寄って、笑うだろう
 
そして
部屋の隅にある水槽に
指を出し入れしては
海月になりたい、だとか
言うんだよ
きっと
 
 
尾びれになりきっていた
両足を戻して
二足歩行を思い出す
出したあと、
君の肩に触れる
 
僅かに熱を帯びた
湿っているであろう膜は
僕を一瞬で包んで
溶かしてしまう
 
 
君は
悪びれもせずに
僕を飲み込んだあと
 
君自身も、そっと
水槽へと
溶けてしまうんだろう
そっと
 
 
そうして僕は
君に抱かれて眠る
 
そうして君は
いつかのシェルターを
思い出して、眠る
 
一つになれる気がして、
眠るんだ
 
 
きっと。
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