世界の中心はマントルだということ/土田
 

ぼくの住む街の風景は
とっても賑やかで
夜はネオンがきらきら輝いて
とってもきれいだよ
ぼくは秋田の田舎からこの都会にきたんだよ
でも朔ちゃんの嫌いな上州前橋の山々はもう
たくさんのビルで見えなくなった
ここには月に吠える犬も
のをあある とをあある やわあ
なんて鳴きながら飼い主を見つめる猫もいない
ぼくが住むせかいはひどく機械的で
諦観と低回が渦をまいて
ぼくを巻き込まずに置き去りにしてゆくんだ
ごめん朔ちゃん
朔ちゃんが好きだったこの都会を
ぼくは愛せそうにないよ

世界の中心はマントルだという事実に
ぼくはすこしだけ救われたような気がする
目をこすってまた目を開けると
そこにはまったく変わりようのない
あたりまえの日常がそこにあった
オノマトペでも表せない音に
なぁ朔ちゃん
ぼくは口語でどもることしかできなかったよ
朔ちゃんが死んだ日
ぼくにはまだ四十五年も時間があったというのに
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