世界の中心はマントルだということ/土田
 
世界の中心はマントルだという事実に
ぼくはすこしだけ救われたような気がする
目をこすって目ヤニを落とすと
朔ちゃんとの思いでもひとつずつ
オノマトペでも表せない音で
それはあたり前の日常のように
どこか近くて遠いところへ落ちてゆく
ぼくが生まれた日
朔ちゃんはもう四十五年も死んでいた

なぁ、朔ちゃん
朔ちゃんがずっと探していたものは
いったい何だったんだろうなぁ
朔ちゃんにしか見えないせかいの地続きを
朔ちゃんはその端正な顔つきに似つかない変な歩きかたをして
いまも地面の底の病気の顔の上で
お気に入りの皮の靴の底を
すり減らしてしるのかなぁ

なぁ朔ちゃん
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