人形/
山中 烏流
何も抱えられないと
気付いたのは
いつだったろうか
押し潰される
重圧に呑まれたまま
私の腕からは
記憶がはみ出していく
お母さん、と
間違えて呼んだあの人は
誰だったか
誰、だったか
手を引いて
歩く指先は、きっと
温かかったような
そんな気が
している
手を引かれて
歩いていた私の指先は
冷たい金属なのに
まだ、そんな気が
している。
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