人形/山中 烏流
手を引いて
歩く指先は、きっと
温かかったような
そんな気が
している
お母さん、と
間違えて呼んだ私の
頭を撫でては
大丈夫と
微笑んでいたから
髪を結う仕草の
拙さに笑っては
庭の芝生に寝転んで
何も映さない瞳に
空を投じていた
月が眠るまで
絵本を読み合っては
何度も、何度も
話の続きを
聞かせてくれた
あの日
ゆっくりと閉じた瞳の
溢した雫の意味を
私は
知らない
あいを知らないと
生きていけないことを
誰かから教えられたような
そんな気が
している
あいを知らないと
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