仲間内ケミカル/カンチェルスキス
 
味のあり方があったっていいとおれは思う。食うか食われるかのほうがおれにはしっくり来る。安定感なんていらない。それに、食われたって、それでいいと思えれば何の問題もないんだ。
 本屋で買ってきた「趣味1」「趣味2」のカバーに結婚相手を紹介してくれる会社のハガキがついてた。趣味の話に関わると、予期せぬものまで呼び込んでしまう。おれはこれを何かのいい機会だととらえた。帰宅して、プロフィール欄を一つずつ埋めていった。でも、最後に一つだけ埋められない欄があった。趣味欄だ。おれの趣味は一つしかなかった。それはとても言いにくいものなので、今まで世間的には無趣味で通してきた。その趣味を自分の中に見出したのは、悪い女にひっかかったからじゃない。おれの体質がすでに一つの趣味になっていたのだ。銭湯で二メートルぐらい垂れ下がった爺の金玉を見てたらそのことに気づいた。おれはさんざん迷ったあげく、最後に残った空欄を埋めた。
「趣味・恐怖政治」
 ハガキを投函した。相手に望む趣味もちゃんと書いた。
「趣味・革命」 
 おれはそんな女をついに探し始めたところだ。



 

 



戻る   Point(6)