サスペンス/きりえしふみ
 
 水面の中央で……そして《彼女》の口許で

  《1+1=2》という簡潔な数式が 通用しない

 《彼女》の手に手錠がかけられたとき 既に
 もう《それ》は 雑踏の中へ逃れている
 幾つもの急く足音 急ぎ走る人たちの荒い息の流れを隠れ蓑に

 人から人へ 移行してゆく 寄生してゆく
 新種のそれ……それら生命体の
 《目撃者A》は縺れた舌先を使ってこう言う

  「そして そいつは私の目の前で……!」

 手錠により拘束された 今は犯罪者の
 ……目撃者A

 (c)haine kotobuki 2007/07/22

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