頭脳ホテル’81/石原大介
塗りおでんパッケージ客の落とし物だっだとして
仮に生け捕りに成功したところでいまさら
あんな化け物どう処置すべきか
見当もつかなかったし
交番に届けるったってちょっと意味がわからないし
あーいっそひとおもいに殺しちまえと
作業着のポケットから小型マイナスドライバーをば取り出し
しっかと両の手に握り締めますと
プルコギプルコギ。
なんて意味不明な呪文唱えつつ
静脈瘤。
青黒い月夜のフジヤマを背後に
東京山の手夜の喧騒を展望す
プライヴェーエト・ジァアグジィー
のスカイパノラマテラスに、むん、とばかり腹ばいになり
気のないエアマットレスの如きバラいろヤモリどんのぶよぶよ下腹部めがけて
「お客さん延長ですか?」
ひと思いに鉄槌振り下したそのとき
「満室で御座います」
頭に螺線する立体駐車場の
ネオンサインが
はじけて飛んだ
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