幸福の木〜飛砂/鯨 勇魚
赤い屋根まで のびるものが蔦葉であり
方解しないように 白い壁に這わせたのだ
おとうさんの書いた 詩を
おかあさんの書いた 詩を
小さな僕は
理解できないでいました
船旅は航海と後悔
遠く見渡す僕は航海士ではないのだけれど
あなたたちを繋ぐ船でした
彫られた表札の深さが傷の
かみそりの様な 万年筆で書かれた原稿により
きちんと整理された筆入れは
食卓から 落下した
その音が 嫌い
散らばる文房具類のように そのままの家族
SAILORの万年筆から零れ 床を這うインク
寝かされた嘘つきな補助灯 暗い寝室
視界をさえぎる 子供の椅子
高い天井
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