幸福な家/
衿野果歩
あの丘に建つお菓子の家は
幸福だけでできていた
パステルカラーと甘い匂い
君はいつだって笑っていたね
だから君が
あの家を出るときに見せた
心底悲しそうな顔が忘れられない
あれから幾月が過ぎ
あの家は丘の上に建ったまま
君は誰も知らない空へ
ふわりと浮かんで星になった
丘の上できらきら
一番きれいに輝く
「降りてきてお菓子の家を食べようよ」
と誘っても
「星屑だけでおなかいっぱいだよ」と笑う
君の声が聞こえる
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