彼女の弾痕/楢山孝介
 
裸になった彼女の身体には
両脇腹と右肩と左の脛に弾痕があって
だから彼女はいつもぎこちない様子で
歩いたり
ものを書いたり
笑ったり
していたんだなと納得して
そこに触れなければいけないような気がして
とりあえず舐めてみた

「とりあえず」なんて思った自分に嫌気が差して
謝ろうかキスしようか悩みつつ彼女の顔を見ると
大丈夫だよもう傷は癒えてるからと
そんな顔をしていて
実際そんなことを言った
だけどもう何だか弾痕に触れる勇気は
なくなってしまって
しっちゃかめっちゃかな体勢で抱き合って
こういう馬鹿げた行為は一番彼女を傷つけてしまうな
なんてことを思って

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