故郷/円谷一
出した
故郷は色付き始め
感情を失ったまま昔の日常を過ごした
休憩時間にわざわざ吹奏楽部の
先輩の所に行って
どうでもいい質問をしながら
君のことをずっと見ていた
世界を?出て行った?人々には
話し掛けられない決まりだから
いつまでも形而上学が好きでいて
君は星空と
プラネタリウムが好きな人だった
想起することで何時でも君に会えることを 理解しているのに
それがもう限界なのも知っている
欲望という我が儘が新しいものを
渇望している
いつまで経っても古いままで
幼児の建てた積み木が崩れてしまって
君は窒息し生きることに苦しむことで
永遠に輪廻している
苦しさを堪えて本物の故郷へ帰った時
もう一つの故郷とは異なるが
ひどく殺風景な景色だった
古びた高校の校舎は建て直されているし
ロータリーのガソリンスタンドも
街のカラオケ屋も潰れていた
君の眠る海の見える丘の墓地に行って
あらん限りの号泣をした
君が感じていた寂しさの欠片を夜空に見た
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