夏/ふるる
 
夏の
夜が
激しさを増し
ぼくは
水が欲しかった
とても

海水浴
波に
持ち上げられて
足がもうつかない場所へ
つま先に虚無が触れ
頭上には
目を閉じても赤い
太陽

波の腕が
ふいに太くなり
無造作に
叩きつけられた
衝撃の後
手のひらがすこし
裂けて

傷口から
ぼくがすこし
失われるような
生まれるような
感覚

波で
洗われては
生まれる


血は
海水にゆらめいて
生き物のように
漂っていった


待ってくれ

もらった手紙の返事を
言うよ

すぐに
照れたり
もったいぶったり
ごめ
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