ケトルか薬缶か/水町綜助
ケトル・
薬缶をコンロの火にかけている
台所には西日がさしこんで
それは雲と雲のあいまに
ほんのわずかのすきまがあって
そこから覗いたもので
束の間ってやつ
台風は過ぎていったようで
いまはどの辺かな
もう海の上かな
温帯低気圧とかいうのにかわったのかな
そういえば今日もテレビをつけてないから
わからないな
ただまだ風はつよいから
きっと雲は速くながれてるだろう
遠くの方でビルにぶつかって
ごうごう音がしているからわかる
空気が漏れるような音は
ガスの出ている音で
まったく抑揚もなく耳に届いて
それがもう五分ものあいだきこえているから
ケトル・
薬缶
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)