十七才の遺書/折釘
青く薄い ひかりの午後
静かに生徒が佇む五月の日
気の早い蝿がふたつ
窓を開いた机にたち止まる
ひき出しの奥には 忘れられた手紙があると
放課後、静寂にのぞきこめば
それはたしかに彼の手跡だ
赤く鑞でふさいだ封書は
消印も押さず
切手も貼らず
誰の指紋も見当たらない
淡いけわいで香につつまれた
生まれ変わりが まるで花である
つめたい額にお前を触れた
私は、かるい軽蔑こそすれ
その儚い横顔に
訴えることも泣くことも
誰に届くものと 知る由もない
如何に死に至ったかが記された
しばらく ここにいてやって
黒髪、私かに ひと束つかむ
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