鮮度/小川 葉
 
新車のマグロに乗って
市場にマネキンを買いに行った
一番新鮮そうなのを一体買って
醤油色の帽子をかぶらせたり
わさび色の下着を着せたり
山芋色のコートを
羽織らせたりしてるうちに
お腹がいっぱいになってしまった
いったいいつになったら
食べてくれるのだろうと思った
マネキンはすでに自分が
食べられてしまっていることに
気づいてはいなかった
市場で売られた若い顔が
今は老人の顔になっていた
マグロもそろそろ鮮度が落ちていて
生ではとても走りそうになかった
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