裏切られ者の愚痴/松本 卓也
光景がこんなにも虚ろだなんて知らなかった
空が黄土色だとか
雲が赤褐色だとか
未来が錆付いているとか
過去が捻くれ曲がっているとか
稲光が音もなく過ぎ
彗星と勘違いして微笑
区別を失くした境界線
映らぬ像が無垢を投影
知らぬ間に思い知る
嘆き妬み僻み
美しくない詩には
一編の存在価値さえない
思い知ったのは昨日だけど
今夜にはどうでもいいと嗤ってみせる
分っているからこそ
逆のベクトルを突っ切りたくもなる
知らぬものに思い知らせたい
叫びは掻き消され
信じれば裏切られ
与えれば奪われ
分け合えば寂しさは増し
微笑むほどに哀しく
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