容器の中の夏/A道化
濃度を増した緑 の根元
アスファルトには 日陰がある
かつて人だった空間には
かつて花束だったものが 積もっている
湿度に黒ずんだ日陰 の隣
アスファルトには 日向がある
泣きながら合わせられた手のひらの跡では
誰もいない夏が 発熱している
夏のことを全て忘れた人たちが
夏のことを何も知らない生き物になれるなら
どうかもう どの夏をも思い出しませんように
何も知らないまま どの夏のことも思い出さぬよう
どうか計らわれますように
アスファルトにある 日陰と日向は
やがては ひとつの夜となり
明ければまた 日陰と日向になり
繰り返し
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