「かったるい」目覚め/千月 話子
朝の光り射す 窓辺にて
ベッドの中で ゆるゆると
まどろみに浸っている その人は
不意に掛けられた 声に
目を覚まそうとしている・・・
「いい天気だし、もう起きなよ」
とろり とした
緩やかな重みから抜け出すように
伸び上げられた 腕は
熱が戻ったように
光りに赤く 透けていく
キラキラと あくび後の涙が
睫毛で弾ける その人は
不意に掛けられた 声に
目を細めて こう言うのだ
「う〜ん、かったるい」と
いつかどこかで見たお話の
そんな たった一言が
何でもない 朝の風景を
フランス映画の ように
優雅に変えてしまった。
「めんどう
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