七夕/山中 烏流
 
夜が空を包み
七色に光る
願いの帯たちが
星の間を縫って
空へと羽ばたいていく頃
 
遥か空の上では
一年分の時を越えて
会瀬を交わす者たちが
確かめ合うかのように
抱き合っている
 
 
天を流れる川は
ただ、さらさらと
静かに流れながら
それを見守って
 
輝きを増す
二つの星たちを
そっと
包み込んでいる
 
 
それを見ていた
私は、ゆっくりと
瞼を閉じながら
 
今夜だけは
どんな悲しい雫も
零れないように、と
願う
 
 
 (刹那
 (輝いた雫は
 
 (きっと
 (悲しくは、ないから
 (大丈夫
 
 
しばらくして
願いを届け終えた
七色の帯たちが
星の間を縫って
地上へと帰還すると
 
川は流れを早め
また、一年分の時を
正確に
刻み始める
 
 
私は
閉じた瞼を開いて
一つ
溜め息を吐いた
 
来年も
この輝きたちが
失われませんように、と
 
願いながら。
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