【七月の夜 木をつつく】/つむじまがり
雨上がりの空に
星は出ていなくても
月は出ていた
私は鼻歌を歌っていたけれど
自転車が接近してきたので
鼻歌はやめた
不意に
私の中から勢いが消えている事に
気がついた
私は乗るべき波に乗れなかったのだ
乗るべき電車に乗れなかったのだ
乗るべき話に乗れなかったのだ
最後のチャンスは過ぎ去ってしまった
そう思うと
やるせなく
やるせなく
月を見上げた
月を見たかった訳ではなく、上を向いていないと
こぼれ落ちそうだったから
不意に
傘で木をつついてみた
雫がこぼれ落ちてきた
あとから
あとから
戻る 編 削 Point(5)