【七月の夜 木をつつく】/つむじまがり
 
雨上がりの空に 
星は出ていなくても
月は出ていた

私は鼻歌を歌っていたけれど 
自転車が接近してきたので
鼻歌はやめた

不意に
私の中から勢いが消えている事に
気がついた

私は乗るべき波に乗れなかったのだ
乗るべき電車に乗れなかったのだ
乗るべき話に乗れなかったのだ
最後のチャンスは過ぎ去ってしまった

そう思うと 
やるせなく 
やるせなく

月を見上げた




月を見たかった訳ではなく、上を向いていないと
こぼれ落ちそうだったから


不意に

傘で木をつついてみた
雫がこぼれ落ちてきた 
あとから 
あとから

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