ジャックは豆の木に登らない/小原あき
だけど、ジャック・ラッセル・テリアでもない
中肉中背
ぼさぼさヘアの
雑種犬ジャックだった
それでも
綺麗な羽根を持っている
小鳥のような気分で
止まり木にとまっているかのごとく
木の台に座り続ける
いつだったか
(今日も良い天気ですね)
いつもの挨拶の後
(こんなに空気がおいしいと空に飛べそうです)
そんなきみに
いつか羽根が生えること
信じている
ジャックの名前の所以は知らない
きっと、ジャックも知らない
だけど、そこにいるのは
ただのジャックだった
犬らしくないジャック
海賊ではないジャック
医者ではないジャック
雑種犬のジャック
ただの中型犬
もちろん鳥になんて
なれない
だけど、
愛情たっぷり
ジャック専用
特製の木の台に
ピン、と背筋を伸ばして
今日も空気を
虫に邪魔されることなく
味わっている
横を通り過ぎると
(こんにちは、今日も良い天気ですね)
と言うのだろう
ああ、ジャック!
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