田舎の初恋/大小島
から、
連れ戻されたぼくは、
日本の田舎のバックパッカーになっていた。
横目で女の人をみる。
なんてきれいな人なのだろう。
ぼくは話しかけたくて話しかけたくて
なんとか時間の成り行きを見守った。
本を閉じた。
本を落とした。
虫を払った。
なんでもしたかった。
でもその女の人は
黙って道路を見ているだけ。
ぼくはあまりにも挙動不審になってしまったから
バツの悪い気分で
ベンチから立ち上がった。
潔く、話しかけられないのなら、立ち去るべし。
でもその前にもう一度だけ
彼女の横顔をみる。
ベンチの覆いの屋根の壁をみるようにして。
ぼくは遠い昔のように
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)