停留所/小川 葉
バスが停留所を見失って
行方不明になったことをニュースで知った夜
しばらく停留させてほしいと
誰かが私の家を訪れた
誰かと思ったらあなただった
あなたは風呂の小窓から
夜空を走るバスを指さして
何も言わずただ頷いてばかりいたので
私は家の前に停留所をつくった
まもなく空からバスが来た
あなたがバスに乗ると
どこから来たものか
停留所をさがしていたたくさんのひとたちが
次々とバスへと乗りこみ
やはりみんな笑顔でただ頷いていた
近所の家の前にもいつのまにか停留所があり
バスが止まってまた誰かを乗せた
バスが通常運行に戻ったことをニュース速報で知った時
もう二度とあなたに会うことはないと思った
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