冷蔵庫/小川 葉
 
比べようもないその宿命を
コンセントがあるかないかで
定められているこの世界に
きっとあなたは親しんで
きっと私も同じように
死んでしまうのだと思う
廃品回収業者が来るまでに
あなたをこうして抱きしめてやる
この世界に親しんだ
あなたのからだと
私のからだを同化させ
私たちは同じだということを
わからせたいし
わかってほしいのだ
少し涙がこぼれるまで
そうしていると
いよいよ
玄関のチャイムが鳴って
私は
こいつです、どうかお願いします
と、指さしたら
あの耳障りな低い音をたてて
冷蔵庫のやつが
こともあろうに
生き返りやがった
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