青い鳥が青い訳/桜井小春
に迫った美奈子のくりくりとした瞳に、思わずドギマギしてしまう。
「私たち人間の心が曇っている時、青い鳥が飛んでいると、青の色に目を奪われ欲しくなってしまう。ところが人間の心が晴れている時に青い鳥が飛んでいても、空の青に溶けて青い鳥の存在を忘れてしまう。だから幸せの時の幸せって分からないんだわ!」
俺はしばし時を忘れて美奈子の模範解答を頭の中で反芻させた。勉強嫌いの俺だが、今までこんなにスッキリとする答えを教えてくれた教師はいない。
信号は進めの青。
「美奈子」
「なぁに?」
「俺、やっぱりお前のこと好きだわ」
「あら、今更何言ってるの?」
可笑しそうに笑う。俺もつられて笑う。美奈子はスカートの裾をひらひらさせながら、舞うように横断歩道を渡っていった。俺は段々広がっていく青空を見上げながら、それに続いた。ピタリと止まる、軽やかにステップを踏んでいた足。
「ね、じゃあ何で空は青いの?」
お前と付き合ってると飽きないよ、まったく。
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