26歳の森/円谷一
れた 辺りを飲み込んで僕を消化しようとしていた陰鬱な暗闇は浄化していったように見えた
気が付くとお腹が一杯になるような爽やかな匂いの朝がやって来ていた 暗闇の森の前に倒れていた 森の中は生者が入れないような不気味さと静寂さで吸い込まれそうだった もう彼女はこの森にはいないと思った きっと上手く成仏したんだと思う 空に穴を開け昇り来る陽が森を越えて僕を激しく照らした 小さく見えた森に背を向けやはり思い残すことを微々たる痛みを感じながら歩き始めた 明日を忘れた真夏の世界は油蝉の鳴き声のようにブルルン…とエンジンをかけ始めていた
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