26歳の森/円谷一
 
 この森を見つけてどれ位になるだろう 僕は今26歳だ
 死者の懐かしい匂いがする 絶えず葉を擦り合わせている森の奥から漂ってくる 決して入ってはならない 暗闇に食べられてしまうから
 泥まみれの骨が入口の隅に堆く積もっている ダウンロードした曲が消えていた 夕闇が迫ってきている 鴉が騒がしく上空に纏まっている 帰る家も無い僕はオーロラのような夜闇が鼻水を垂らした幼児のような出で立ちの森に降りてくるのを待つ
 半分朽ちかけて放置されてあったキャンプファイヤーの同級生の髪型に似た炎が激しく燃え盛っている(僕が点けたのだ) こうすればもし寝てしまっても森の暗闇に襲われることは無い それは森の外に出
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