行間/小川 葉
雨上がりの蛙が
行間を飛び越えて
次の行方をさがしている
わかったような顔をして
いつか確実に訪れる
本の終わりも知らずに
行間を飛び越える時
蛙はなにも
考えていないのだ
それが人間と動物の
大きな違いだ
どんな本にも
いつか終わりがやってくる
たとえどんなに分厚い本でも
私はときどき
行間から一歩も出られなくなる
そんな時私は
蛙の無知をとても
羨ましく思う
やっとのことで
行間から脱出して
散歩に出かけると
アスファルトの上で
一枚の紙になった
蛙を発見する
そこにはもはや
飛び越えるための
行間はない
人間と動物には
決定的な違いはあれど
最後の姿に違いはなかった
行間を失った時
本は終わる
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