停泊する夏/前田ふむふむ
毒薬のような願望を散りばめた、
陰茎の夕暮れが、
いちじく色の電灯のなかで燃え尽きると、
ようやく、わたしの夜が訪れる。
静寂をうたう障子は、わたしのふるえる呼気で、
固く閉ざしてある。
その深い呼気のなかから、
光度をつよめる梵字を、
水墨画のように描いてある、新芽に萌える木々と、
朽ち果てた灌木が、
見えては、隠れている。
木々の言葉には、すべて答えが仕舞ってある。と
あなたはいった。
視線を失うところ、――
わたしと父が、海の薫りのする、
白光する河原で、小石を丁寧に、積み上げている。
向かい合った石の一つずつが
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