体温/山中 烏流
いつのまにか
溶け込んでいた、世界と
私との接着面に
体温計をさしてみる
ゆっくりと
開いた手のひらと
大気との間
握ることはせず
また、摘まむこともない
少しずつ
上がっていく目盛りを
伏し目がちに
見守る
見守りながら
私は更に
溶け込んでいく
(赤い帯が
(私の平熱を
(指、差した
ほら、同じと
空に向けて
体温計を掲げる
表面の硝子に
反射した、光たちが
きらきらと踊って
私の側で溶ける
私の
体温で、溶ける
赤い帯を
始まりまで戻して
私は空へと
体温計を、投げつけた
一回転して
戻ってきたそれを
そっと手に戻して
目盛りを確かめる
空が少し
赤くなったように、
見えた。
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