モネの見た世界/あずみの
ときどき浮かび上がる記憶の断片
もっとよく見ようと手を伸ばすと
するすると溶けるように消えてしまって
あとにはもどかしさばかりが残って
鮮明に思い出そうとすればするほど
ぼんやりと滲んでしまう想い出に
焦りばかりが募って息が苦しくなって
忘れないように忘れないように
何度もトレースする記憶は
足りないピースを補ううちに歪んでしまって
どこからが事実だったのかもう
分からなくなってしまって
ただ印象派の絵画のような
ぼやけた景色だけが
こころの海に静かに沈んでゆく
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