あめ/仲本いすら
雨が長く続けばいいなと
あの方はいう
白くなりそこねたベンチに腰掛けて
誰かに話すふうに優しい目をしている
正面からサヨナラバスがクラクションを鳴らす
「行かなくても大丈夫ですか」と私は肩に手をやるのだけど
まるで死んでいたかのように
動かない
しばらくして、
雲の隙間をゆったりとしたイルカが泳ぎはじめた頃に
聞きなれた詩を読みはじめて
誰かと話すふうに優しい目をしている
ゆうがたクインテットの時間が終わって
まだ頭にちょっとしたクラシックが残ったまま
その状態のまま、
(ぽろろん、ぽろん、ぽろ)
(ぱらろん、ぴちゃん、ぽろ)
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)