21時/船田 仰
 
鋭角の午後をよびとめて
僕らは街をあるきまわる
一杯のコーヒーをもとめた店で
冷えすぎた空気にふるえて笑う
すきだとおもうんだ。

土曜日から月曜日までの数直線上に
いくつ君が立ってるかということ
何歩かぶんのよりみちをして
厚着したぼくはおくれる
しっかり可愛い現在におくれる

ゆきすぎたカップルのりょうてに
何か約束のようなのがぶらさがっていて
雨上がりのおもたい街の匂いに
それは似合わないこともない
匂いの行列が笑ったり話したりしながら
視線をどこかに飛ばし
蛇行する自転車があぶなげに前へすすみ
僕らは歩いてその先へ行こう

よりみちみたいな溜息が
煙草の火にかくれて
鋭角の午後は角がまるくなり
ぼくは禁煙をおもいだした
クレープの香りただよう
交差点から駅まで
うごめく喧騒がふるわす空気で
空は暗く見えていた


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