天秤を、/松本 卓也
本当は分っている
だけど分らないふりをして
変人を装っている方が
特別な人間だと勘違いしていられる
本当に分ってない
だけど分ったふりをして
周りに合わせている方が
寂しさを紛らわせる事ができる
揺れ動く天秤のどちらかに
矛盾する本音を積み上げながら
少しでも振り幅が小さくなるよう
傍目からは安定して見れるよう
分ってくれやしない、と
分ってもらおうとしない
理解できない、と
理解するつもりがない
嘘と真
内面と体面
夢と現実
社会と孤独
責任と義務
相反を積み重ねながら
天秤は揺れている
天秤を揺らしてる
欠損した願望を一つ、右に置き
取り繕う弁明を一つ、左に置き
揺れる限り惑い続ける
揺らす限り生き続ける
価値に興味すらわかない作業
心が揺れる
想いが揺れる
命を揺らす
時間を揺らす
能動でも受動でもなく
ただ示すためだけに
受け入れたわけじゃない
ただ止まる瞬間に見えるものが
どれだけ無意味なのか
知りたいだけだから
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