小さい/水在らあらあ
一人ぼっちだ
花々の中で
麦畑を風が渡って
そこに点在するポピーは
そのひとつひとつが
恋で
黄色と赤の美しい翼を持った小鳥が
巡礼道の真ん中で風に吹かれて丸まっている
手に取ると
この手の暖かさの中でゆっくり目を閉じて
道の脇の木の根元にそっと置いて
手を見ると茶色い血がついていて
(君は 死んじゃうんだね)
麦畑の真ん中を通る道には
たくさんの小さなねずみたちが死んでいて
蝿たちはそれを世界に帰す作業に忙しくて
人間のまきちらした死を
世界に帰すのに忙しくて
もう寝よう
宿に着いたら
もう
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